藤岡牧夫のバーチャルミュージアムにようこそ!
新しく「バーチャルミュージアム」がオープンしました。 今回はテーマごとに3つの部屋に展示しました。 どうぞごゆっくりごらん下さい。
Fujioka Makio
1949年長野県木曾谷で生まれる。 小学校5年から高校までを長野市で暮らす。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、フリーのイラストレーターとして活動。 1999年カヌーイスト野田知祐氏と共著の絵本「笹舟のカヌー」(小学館)を出版。 「ささ舟、四万十川を行く」(岩崎書店)、「四つ葉がひとつ」(愛育社)の著書の他、小学校国語科書表紙絵(教育出版) 2000年度大阪ガスカレンダー、JR 東日本ポスター、浦安市福祉バスデザイン等を手がける。 2003年度エクソンモービル社のカレンダーに「笹舟のカヌー」が採択される。 2002年より信濃毎日新聞社夕刊「風に吹かれて」を連載。 ストーリーも自身でつけ、連載は2008年に100回を越える。 2004年よりチャリティー絵本シリーズ「イルカのトリトン」(晴海トリトンスクエアー)を制作。 絵本の場面がトリトンの庭に展示される。
ツツジの花が咲く山の池へ、僕らはやって来た。
雨の中、スイレンが葉を広げ始めた水面では、カエルたちがしきりにジャンプしている。
体を動かすのが好きなぼくらも、つられてジャンプした。
「ずいぶん元気がいいねえ」と僕がカエルに聞くと、梅雨明けに各池対抗の運動会があるという。
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夏の暑い日、蓮(はす)の花の美しい池へ、僕らは水遊びに来た。
トンボたちが元気良く飛び回っている。
一匹が枯れた枝に止まったので、声をかけた。
「休んでいる間にしりとりしよう」
「はす」「すいか」「かぶと」「とんぼ」
と続くと、みんなニッコリした。
「ぼうし」「しずく」「くも」。
くも、と聞いたとたん、とんぼは「ゲゲ」と声を発し、しっぽを高く挙げたまま、動かなくなってしまった。
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ヤマセミの背に乗って
本格的に雪が降り、川原にも雪が積もったある日、ヤマセミが、雪合戦をして、くたびれ果てている子どもらの頭上を通りかかった。
「オーイ、帰るところなんだ。背中に乗せて行ってくれない」。子どもから声が掛かった。
「いいよ」
川すじを飛ぶヤマセミからは、丸石に積もった丸い雪がたくさん見える。
「ワタシ、家に帰ったら大福を食べたいな」
「僕はバニラアイスだ」
「ワタシ、ホカホカの肉まんがいいな」
みんな白くて丸い食べ物。
「腹ペコ連中だな」
そう思ったヤマセミはスピードを上げた。そしてこの子どもらは、きっと冬の大雪にも負けずに、元気で乗り切っていくだろうと思った。
川原の丸石丸い雪大福まんじゅう目に浮かぶ
川原の丸石丸い雪バニラアイスに生つばごくり
川原の丸石丸い雪ホカホカ肉まんお腹がグー
川原の丸石積もる雪
そんなことが あってから しばらくして、ぼくらは
くまさんに 会いに 行ったんだ。
そしたら、くまさんの すんでいる木に
こんなはり紙があった。
みんなへ 春まで木の下の 穴で ねます くま
くまさんは、冬眠したんだ。
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くまさんは 新しい森をさがしにでかけた。
どんな森が あるのかなあ・・・。
どんな子どもたちが まっているののかなあ・・・。
夏休(なつやす)みは、まいにちまいにち楽(たの)しくてしかたなかったんだよ。
あるあつい日(ひ)、急流(きゅうりゅう)で ささ舟(ふね)をこいで あそんだんだ。
水(みず)しぶきの上(あ)がる川(かわ)を ささ舟でザブザブこいで行(い)くと、
ドキドキ ハラハラ ワクワク ドキドキ。 スリル満点(まんてん)さ!
くまさんは、泳(およ)ぐのも じょうずで 魚(さかな)のたくさんいる場所(ばしょ)も
よく知(し)っていたんだ。
川(かわ)のふちで 動物(どうぶつ)の角(つの)みたいなものを 見(み)つけると
「シカのよ。水(みず)を飲(の)みに きたときに 落(お)ちたのね。
シカは年(ねん)に一回(いっかい)、角を落(お)とすのよ」とくまさんは教(おし)えてくれた。
「シカも千曲(ちくま)川(がわ)の水を飲んで、元気(げんき)をもらうんだね!」
くまさんは いいにおいの...
Noda Tomosuke
笹舟のカヌーシリーズの文章を担当 1938年熊本県生まれ。 雑誌記者を経て、 第9回日本ノンフィクション賞・新人賞を受賞。 世界の川をカヌーで漕ぎ 日本のカヌーイストの草分け。 2002年より毎年「野田さんと千曲川を下る会」を 北信州で行っている。
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